退職ナビゲーター

企業側からのQ&A

退職は、被雇用者である労働者には好ましい転機であると同時に望ましくない事態であるといえます。一方、雇用者である企業側にとって退職は悩ましい問題であるといえます。退職は人材が抜けることであり、穴を埋めるために新しい人材を確保しなければなりません。また、退職者への給料や退職金を出さなければならないため、経理的にも大きな負担を強いられることになります。そのため、企業が退職に対して抱えている疑問や悩みは無数にあるといえます。

企業側からのQ&A

企業が退職に対して持っている疑問は、広範囲にわたっているといえます。そうした疑問を解消するためにも社内で就業規則を作っておくのですが、就業規則の中には労働基準法などの法令に反するものも見受けられます。

企業が守るべきものとは

企業は、どうしても自社の利益を最優先に考える性質を持つため、法令違反を平然と社内外で行うことがしばしばあります。近年、経済学や法学などで注目されているのが「コンプライアンス」という言葉です。「コンプライアンス」は直訳すると「法令尊守」という意味で、「法を守ることで企業の信用を守る」という資本主義経済の基本的なルールを明示した言葉なのです。最近は法令を守ることよりも自社利益を守ることを優先させた結果、会社そのものを存続させることができなくなった企業も少なくありません。

法令は何を守るのか

では、政府が定めた法令とは何を守るものなのでしょうか。最近の企業のトップは有識者会議などで企業利益優先を訴えるのに忙しいようですが、そこに大きな間違いがあります。企業や会社は、大きくなればなるほど社長などの管理職だけで成立しなくなるのです。それを忘れて労働者を法令に背く待遇で働かせ続ければ、いつかしっぺ返しを食うことになります。法令とは会社を支え、国を支える労働者である国民を保護するためのルールなのです。

企業が抱えている退職への疑問

しかし、企業で退職関連を取り扱う人事部の人などにとって、退職時の手続きや退職に関する法的な解釈というものは分かりづらいものであるといえます。退職という事態に直面することは珍しくないのですが、状況の違いなどによって退職の内容が大きく変わることになるからです。ここでは、そうした「分かりづらい退職に対する疑問」についてQ&A形式で回答していきます。

退職日を延期させたい

従業員が「一ヵ月後に退職する」と退職願を提出してきたが、引継ぎや後任者が難しいポジションにある業務にある者なので、後任者が見つかるまで退職されないように引き止めたい。退職希望者の退職日は引き伸ばせるのか?

退職は労働者の意思優先

従業員の意思で退職する場合、会社にはその退職日を引き伸ばす権限を与えられていません。自己都合退職は、労働者の意思の元に行われる行為であり労働者の権利なのです。もし、雇用契約を結ぶときに「引継ぎが見つからない時は退職日を引き伸ばす」という条項を盛り込んでいたなら、その雇用契約を元に慰留を試みるべきでしょう。というか、相談をしてくる位だからそんな条項を盛り込んでいませんよね? 退職願いを出された時点で会社がすべきことは、強権発動による引止めではなく円満退社のための努力と、後任者探しなのです。

無断欠勤の多い社員を解雇したい…

ある社員が無断欠勤を繰り返しています。今回は2週間以上にわたって無断欠勤を繰り返しています。有給休暇も、既に無断欠勤の振替で使い切っています。しかも、彼の住居を訪ねても不在で電話をかけても出ないため、欠勤の理由を聞き出すことも出来ません。この社員を、無断欠勤を理由に懲戒解雇にしたいのですが、問題ないでしょうか?

就業規則内で定められていればOK

基本的には、就業規則内で定められている「懲戒の事由」に該当する行為をとったのであれば、懲戒解雇にすることに問題はありません。休暇を取る事は労働者の権利ですが、事前連絡なしの欠勤という形で長期間休むのは一般的に見ても、正しいとはいえません。しかし、会社側が欠勤社員との連絡が取れない状態であるというのは非常に不都合であるといえます。もしも、懲戒解雇を決めた途端に彼が戻ってきて「不当解雇だ!」と裁判を起こした場合、裁判が長期化する恐れや会社側が敗訴する可能性があります。とりあえず、就業規則を再確認しておきましょう。もしかしたら「長期にわたって無断欠勤を続けた場合」や「社員が消息を絶った場合」の項目があるかもしれません。あと、欠勤社員の身元保証人や実家の方にも連絡を取ってみましょう。案外、実家に隠れているのかもしれませんし。

退職者を懲戒解雇したい

この前退職した社員が、実は懲戒事由に当たる行為を行っていたことが先日の社内調査で発覚しました。彼への退職金や給料を既に払い込んでいるため、まさに「盗人に追い銭」です。非常に腹立たしいので、彼を自己都合退職から懲戒解雇に変更したいのですが可能でしょうか? この懲戒解雇によって退職金や給料は取り戻せるでしょうか?

在職していない者は解雇できません

あなたはこのような話を知っていますか? 『イエス・キリストが弟子と町を歩いていると、民衆に石を投げられている女性を目撃しました。女性は罪を犯したので石投げの刑にあっていたのです。そこでイエスは「罪を犯したというのならば罰は与えられなければならない。ただし、自分は罪を犯したことが無いという者だけが石を投げるように」と民衆に説きました。民衆は一人、また一人石を投げるのを止めました。嬉々として石を投げているのはイエスだけになりました。』つまり、「罪を犯していない人間だけが罪を裁ける」ように、「退職していない人間だけを解雇できる」のです。この場合、退職金や給料を取り返せるのは就業規則などでその旨を明記していた時だけになります。もしも、その元社員が犯した「懲戒事由に当たる行為」が横領であったら裁判に持ち込み、会社に与えた損害を請求するべきでしょう。それ以外の事由の場合は、裁判に持ち込んでも前例が二分されていることもあって難しいといえます。

社内制度で融資をしていた社員が退職を希望している

当社では、社内制度として住宅資金融資などを整備しています。この前、この住宅資金融資制度を利用しているある社員から退職願を提出されました。退職については何度か話し合いを持ってお互いに良い形で合意が取れているのですが、融資制度の案件だけが宙ぶらりんになっています。融資した資金はどうすればいいのでしょうか?

お金は借りたら返しましょう

企業の中には、このように住宅資金を融資する社内制度を備えている会社もあります。相談者の会社も、そんな会社の一つのようです。では、退職者はこの融資された資金をどうすればいいのでしょうか? まず、社内で積み立てた資金を元に融資をしている場合、この退職者は融資された資金を返済する義務があります。借り逃げ・逃げ得をされるとなると、せっかくの円満退社が水の泡です。出来れば、退職前後に話し合いの場を作り早急に返済計画を作る必要があります。また、会社が提携している金融機関を介して融資を行い、会社側が利息を補填する形を取っているのであれば、金融機関を交えて融資制度を前提とする返済計画を変更する必要があります。

期間雇用契約者が退職したがっている場合

我が社では、契約期間を定めた雇用契約で社員を雇用する形式を採用しています。契約が満了する時期が近づいてきたら、社員に契約更新か退職かの確認を取ります。しかし、契約期間を半分ほど残している社員が退職届を提出してきました。この場合、この社員を退職させるべきなのでしょうか?

期間が定まっているなら満了まで

民法において、雇用契約に「いつからいつまで」という期間が設定されていない場合、退職の自由は被雇用者にあり、退職の意思を示してから二週間で退職することができます。しかし、雇用契約の中で期間が限定されている場合、被雇用者は契約が満了するまで退職することは許されていません。この場合、退職希望者と会社の間で話し合いを行い「退職か継続か」を突き詰めていくべきでしょう。もし、退職希望者がどうしても退職したい場合は、会社から解雇宣告と言う形を取らざるを得ません。この場合は、会社側が退職日までの給与と解雇予告手当を払うことになります。

退職者が後釜の見つかった後に退職撤回を申し立てた

この前ある社員が退職を申し出てきたので、会社のほうで自己都合退職ということで彼の退職日を設定し、彼の残っていた有給休暇の消化や補充要員の求人などの手続きを済ませました。無事に補充要員も見つかり採用を済ませて、退職日の次の日から出てもらうことになったのですが、退職を希望した社員が「退職を撤回したい」と言い出しました。会社としては、ここまで話が進んでいるのに……という気持ちなのですが、彼の退職撤回を受け入れるべきなのでしょうか?

世の中そんなに甘くありません

退職のための手続きでは、「退職願」は撤回できて「退職届」は撤回できないといわれています。しかし、この場合は退職の撤回は出来ません。実は、退職願でも退職届でも一度会社側から雇用関係の解除の許諾書が出ていると、退職の意思を撤回することは出来なくなるのです。実際、会社のほうとしては彼の円満退社に向けた準備を進め彼が抜けた穴を埋めるための人材を既に見つけています。つまり、会社側は彼の退職願または退職届を受理したことになります。ただし、この退職の手続きに不備があって就業規則や法令に従っていなかった場合は、彼の言い分が通る可能性があります。

退職理由の違いを退職金に反映させても良いのか?

会社都合退職や定年退職はともかく、自己都合退職者に退職金を全額払いたくない。だから自己都合退職の場合の退職金を減額したいのだが、これは合法だろうか?

合法です。

退職金制度は、会社ごとに異なるものとなっています。退職金が無いところもあれば、1年在職でも退職金が支払われるところだってあります。それに、退職金の額を退職理由の違いで増減させることを戒める法令は現時点では存在していません。ただし、退職金の計算方法や増減などの算出方法などを就業規則に明記することは法令で定められています。あと、御社はサービス残業とか退職者の給料への謎の天引きを行っていないでしょうか? 退職金の減額を考えるのも結構ですが、サービス残業はまったくの違法なので時効まで遡って払い込むようにしてください。

会社が合併した場合の退職金は?

このたび親会社に吸収合併されることになった当社ですが、一部の社員から「合併されたらこの会社がなくなるわけだから、会社には退職金を払う義務がある」と退職金の清算・支給を要求されました。……吸収合併されるような状態の当社に、従業員全員に退職金を払う余裕はありません。どうすればいいのでしょうか? ちなみに、退職金を要求している社員は別に退職するわけではありません。

退職金は退職するときだけ

会社が整理倒産するときには、退職することになる社員に退職金を払うことは珍しくありませんが、「吸収合併という形で存続することになる会社が社員に退職金を払う」という話を私は聞いたことがありません。というか、吸収合併された時点であなたの会社の雇用契約は全て吸収先の親会社に引き継がれます。別に吸収合併前に退職するわけではないのであれば、吸収の時点で退職金を払う必要はどこにもありません。吸収合併後にあなたの会社の社員が退職することになった場合、雇用契約を引き継いだ親会社が吸収前の会社と吸収後の会社の在籍年数を合わせて計算することになるので、吸収合併されるあなたの会社は退職金に悩む必要はありません。というか、お宅の社員はゆとり世代ですか?